尺八について3

About Shakuhachi-3/尺八基礎3

これが掘ったまま・加工する前の真竹です。(乾燥させてあります)
蕪を掃除して余分な根っこを切り落とし、幾重もの工程を経て画像に写っている部分が尺八になるわけです。

 

意外と知られていないことですが竹の節の向き・並び順には一定の法則性があります。

『その昔は尺八にする際に決まった向きで竹を使ったものだ』と都山流尺八の長老先生に聞かされたことがあります。

 

竹の節は前後に互い違いで並んでいます。

【オモテ竹】

横から見たときに、【抱き節/だきふし】といって一番根っこに近い節が尺八の表面に向かって前上がりになっており、そこから交互に節が並んだ結果、歌口のところでは節の向きは前下がりになります。

この節の向きを【オモテ竹】と言います。

オモテ竹の場合、歌口のところで節が前下がりになります。

この節の向きが尺八の歌口を細工する際の形状に合っていると言われており、以前は節をこの方向で使える竹を好んで尺八を作ったそうです。

もちろんオモテ竹でない尺八も多く見かけますし、音色と直結する要素ではありません。

 

真竹のすべてが尺八に加工できるわけではありません。

*太さ

*節の伸び方・節の間隔が指孔に沿ったものであるかどうか

*曲がり具合が尺八にするのに向いているか

*曲がりがきつい場合は加熱して矯め(ため)と言って、いわゆる矯正をやりますが、竹に負担が掛かるため極力抑えたい作業です。

など。尺八として使えるには、いくつもの条件をクリアした真竹のみとなります。

 

余談として・・・
オモテ向きでは尺八として使えず節の向きをウラ返しにして使ったものを【ウラ竹】
横向きに節を使った尺八を【横竹】
節の間隔が指孔に上手く合わないために節を飛ばして作ったものを【飛ばし】
などと言います。最近そんな言葉もあまり聞かなくなりましたし、節の向きは鳴りや音色と大きく直結する要素ではありません。

 

節の向きや竹の姿形は今でも製管師(製管士)先生方の価格設定のいちおうの基準になっています。

近年では竹細工が前ほど行われず竹藪が荒れてしまい真竹を以前ほど掘らなくなった結果として、尺八製作に向いている真竹が採れにくくなっており、節の向きどころか節の間隔、節の数などが本来とは多少異なった竹でも尺八にするケースがあります。

尺八の演奏専門家の間では『尺八の外見は気にしない、鳴りがよければOK!』という方が多いように見受けられますが、私個人は父:石倉央山が製管師だったこともあり、楽器のルックスも重要視したいと思います。

 


年代による中継ぎの化粧の違い

音色に大きく関わる部分ではありませんが、年代ごとの中継ぎ素材の違いを掲載しておきます。

父の代から我が家にある尺八です。

下から古い順に並んでいます。

 

上から順に藤巻(とうまき)
銀輪(ぎんわ)・石目(いしめ)打ち(後期)
銀輪(ぎんわ)・石目(いしめ)打ち(前期)
セル輪

最近ではよほどリクエストでもない限り【藤巻】が大半となっています。

銀輪・石目打ちは現在も作成可能ですが、大変な手間暇が掛かるため製作者側からはあまり好まれないようです。

セル輪は父:石倉央山が製管をはじめた時代(昭和40年代後半-50年代前半)までは使われており、当時は鼈甲(べっこう)調のセル輪もありました。


楽器の個体差

これまで<尺八について>では楽器の基本的なことを書いてきましたが、ここでは楽器そのものの個体の違いなどもご紹介します。

天然の真竹で作られるため、1本ごとに太さや節の向きなども大きく異なる点があります。

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また、竹は湿度・気温の変化に大変敏感でデリケートなため、保管状態次第ではすぐに割れてしまいます。

特に冬場の暖房シーズンや直射日光などによる乾燥に非常に弱く、演奏時以外は割れ防止のためにビニール袋に入れて密閉する人が増えています。

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こちらは割れた尺八を修理のために幾重にも巻かれたものです。

 

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天然素材ゆえ、太さもこのように異なります。

 

 

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こうした太さ、顎当たりの形状、歌口の深さなどの微妙な個体差と演奏者各々との相性、奏法、技量によって音色の個人差や個性の一つにつながる要因にもなっています。

 

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